大谷翔平の流れを変えるバントや岡本和真の5打点の活躍などでイタリアを下し5大会連続の準決勝進出
3月16日、『カーネクスト 2023 WORLD BASEBALL CLASSIC™ 準々決勝ラウンド 東京プール』で侍ジャパンがイタリアと対戦。「負ければ即敗退」というトーナメントに入ったが、侍ジャパンが底力を発揮しイタリアを9対3で退け、5大会連続の準決勝進出を決めた。
MLB殿堂入りを果たしているマイク・ピアザ監督のもと、イタリア人だけでなくイタリアにルーツのある優秀な選手たちを集めたチームの特徴のひとつは大胆な守備シフトだ。これが激戦のプールAを2位で通過する要因のひとつにもなったが、この日も果敢にシフトを敷いてきた。
左打者に対しては一、二塁間に内野手3人を敷くことが多く、初回の大谷翔平(エンゼルス)のセンター前に抜けたかと思われた打球は遊撃手ニッキー・ロペスが二塁ベース後ろで横っ飛びして好捕。先制の芽を摘まれた。
だが、このシフトを逆手に取ったのも大谷だった。3回、近藤健介(ソフトバンク)が四球で出塁すると、打席には大谷。第1打席と同じく内野手は右寄りに守り、三遊間にはエンゼルスの同僚でもある三塁手デービッド・フレッチャーのみが就いた。ここで大谷はガラ空きの三塁線目がけてバント。やや投手寄りのゴロになり左腕ジョセフ・ラソーサはなんとかグラブに収めるも、大谷の俊足に慌てたのか一塁へ悪送球(記録は安打と失策)。1死一、三塁とチャンスを広げた。
すると、この日4番に入った吉田正尚(レッドソックス)がセンター前に抜けようかとする打球を放つと、これも二塁ベース近くにいたロペスが好捕して処理するが、その間に近藤が先制のホームを踏んだ。
さらに5番・村上宗隆(ヤクルト)が四球を選んでチャンスが続くと、打席には岡本和真(巨人)。ここで6球目のスライダーに泳ぎながらもバットの芯でとらえると、打球は大歓声に包まれレフトスタンドへ。3ランとなり、この回4点を奪って試合の主導権を握った。
投げても大谷は4回までイタリア打線を2安打に抑え反撃を許さない。しかし5回、デービッド・フレッチャーの安打や2死球で満塁のピンチを招く。するとフレッチャー兄弟の弟であるドミニク・フレッチャーに対して161キロのストレートで詰まらせながらも、ライト前に落とされ、これが2点タイムリーに。リードを2点に縮められ大谷は降板となった。
このピンチを救ったのが伊藤大海(日本ハム)だ。ピアザ監督が「(もうすぐ)MLBレベル」と称した4番ブレット・サリバンに粘られながらも、最後は153キロのストレートでショートフライに抑えてピンチを脱した。
すると5回裏、村上と岡本の連続長打で2点を追加し、7回には吉田の打った瞬間分かるライトへのソロ本塁打と右手負傷からスタメン復帰した源田壮亮(西武)のタイムリーでダメ押し。
投手陣は3番手以降も今永昇太(DeNA)、ダルビッシュ有(パドレス)、大勢(巨人)と繋いでいき、失点はダルビッシュがドミニク・フレッチャーに打たれたソロ本塁打のみ。投打が噛み合った侍ジャパンが準決勝・決勝が行われるアメリカ・マイアミ行きへのチケットを手にした。
この後、侍ジャパンは決戦の地へ向かい現地で数日の調整をし、日本時間3月21日8時から行われる準決勝に臨む予定だ。連覇した第2回大会以来の王座奪還まで、あと2勝。侍ジャパンが野球の母国・アメリカでどんな躍動を見せるのか楽しみだ。
監督・選手コメント
栗山英樹監督
「勝ちきるということに加え、野球の生まれたアメリカで、そこで活躍する選手たちとどうしても戦わせたかった。勝負はまたここからだなという気持ちです。(大谷について)ずっと彼を見てきて、翔平らしさが出るのは“この試合、絶対勝つんだ”という試合で野球小僧になった時なんです。(ファンによる久々の声出し応援について)いかに皆さんの声援や思いが大きいかをあらためて感じました。恩返しするためにもすべてを出しきって勝ちきりたいです」
大谷翔平(エンゼルス)
「(投球について)最後はあまり良くなかったですが、それまではテンポ良く投げられました。一発を警戒しながら投げました。(セーフティーバントについて)あの場面、無理に引っ張ってダブルプレーが一番良くないと思ったので、そのリスクを排しつつリターンの大きいことをチョイスしました。(初めてのWBC5試合を終えて)素晴らしい声援をいただき毎日ワクワクした気持ちでプレーができています。独特の緊張感もあり特別なものです。気を引き締めて残り2試合も戦っていきたいです」
岡本和真(巨人)
「(1本塁打5打点の活躍)なんとか勝ってアメリカに行きたかったので良かったです。皆さんで繋いで勝った試合です。(本塁打について)上手くバットに乗って良い形で打球を上げることができました。(今後に向けて)このメンバーと一緒にできる試合はもう少ないので悔いのないように頑張りたいです」
村上宗隆(ヤクルト)
「チャンスで打てないことが多かったのですが初めてタイムリーが打てて良かったです。練習やトレーニングで試行錯誤をして、昨日“これなら行ける”という根拠や自信を持つことができました。逆方向に打球が飛べば良い状態なので感覚を掴むことができました。いろんな苦しみを久々に味わいましたが、多くのお客さんの前で戦い、あらためてやりがいを感じました。とにかく勝てるよう頑張ってきます」
マイク・ピアザ監督
「投手が思った通りにコマンドできませんでした。8四球も出しては日本のような強いチームには勝てません。スカウティングレポートにより意図したプレーもできましたが、四球や失策があってはどうにもならなかったです。だが、ここまで来られたことはイタリア野球全体の準備の賜物でした。素晴らしい選手たちとイタリア野球に良い影響を与えることができました。これをヨーロッパ全体の野球の発展に繋げていきたいです」